王様とうさぎさん
「え、なにを……?」

 允は親指で莉王の唇に触れながら、

「及川さんたちに急かされて、初めてキスしたとき、お前は怒って出て行きかけたのに、戻ってきて、俺の唇についた自分の口紅を指で拭いていった。

 あのときの顔と仕草が可愛くて」

 なんだか胸に焼きついた、と言い出す。

「そ、そんなあとなんですか?」

 それって、出会って、結構経ってないだろうか。

 じゃあ、そこまでは打算だったのだろうか、と思ったが、允は相変わらず、深く考えていないらしく、気にしている風にもなかった。

「今日はやらないんだな。

 わかってるからか?」
と訊いてくる。

 え、なにを?
と思ったとき、もう一度、口づけてきた。

 一度でやめないことをかな、と思いながら、そのまま、允に抱き締められていた。

 允の白いシャツを通じて伝わって来る体温と鼓動に落ち着く。

 落ち着くけど……

 まあ、確かに、ときめかないこともないな、と莉王は冷静に思っていた。
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