王様とうさぎさん
 取りに行きたいものがあるので、アパートに寄ってもらう途中だったのだが、いつもの商店の前に、おばさんが居ないのに気がついた。

 車から降りて、莉王は店の前を歩く。

 今、居ないだけかと思った。

 だが、気配がない。

『お帰りー、莉王ちゃん』

 死んでからも、此処を掃きながら、いつも挨拶してくれていた。

 いや、生きているときは、その時間がまちまちだったから、出会わないこともあったのに。

 霊になってからは、夜遅い時間でも挨拶してくれていたのに。

「なんで……命日でもなんでもないのに」

 なにもない日に、こんな突然に。

 霊って、こんなに簡単に去ってしまうものなのか。

 いや、そうだった気がする。

 ひいおじいちゃんとかも、いつの間にか、すうっと消えていた。

 自分が子どもだったから、たいした感慨も抱かずに通り過ぎてしまっただけで。

「……あんた、私が消えても泣きそうね」
という清香の声がすぐ耳元でした気がした。

「……泣きますよ」
と小さく呟く。
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