ラグタイム
兄貴の隣には、黒髪を高い位置でポニーテールにした小柄な女の子が椅子に座っていた。

あの子が兄貴と一緒に駆け落ちをした、静絵さんって言う人なんだと思った。

「――夕貴…!」

あたしがここにいることに驚いたと言うように、兄貴がガタッと椅子から立ちあがった。

「夕貴、何でお前がここに…!?」

あたしに聞こうとした兄貴だったが、
「朝貴が帰ってくるまでの間、彼女がお前の代理として働いていたんだよ」

藤本さんが答えた。

「えっ?」

武人と翼の声がそろったかと思ったら、あたしに視線を向けた。

「か、彼女って…ええっ!?」

翼が驚いたと言うようにあたしを見つめてきた。

武人は信じられないと言うようにあたしを見つめている。
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