ラグタイム
そうなるよね、2人は知らなかったんだから…。

何より武人はあたしに料理を教えていた。

教えた相手が男ではなく女だったら、そんな反応をされるのは当然だ。

「理由は終わったら話す。

黄瀬さんところのおばあさんとお母さんがきた」

藤本さんの言葉に視線を向けると、着物姿のおばあさんと白いシャツに黒いズボンの中年の女の人が走ってホールに現れた。

静絵さんのおばあさんとお母さんのようだ。

「静絵!」

静絵さんのお母さんに名前を呼ばれた静絵さんは、2人から目をそらすようにうつむいた。

「彼らは電車と船を乗り継いで月明島に行ったそうです。

そこで喫茶店を経営している夫婦のところで住み込みで働いていたそうです」

藤本さんが静絵さんのおばあさんとお母さんに説明した。
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