ラグタイム
藤本さんを深く傷つけているのはわかっている。

だけど、あたしは武人のことが好きなんだ。

今も目の前に藤本さんがいるのに、あたしの頭の中は武人のことを考えているんだから。

「そんなにはっきりと言われるとは、思っても見なかったな…」

藤本さんは呟くように言った後、自嘲気味に笑った。

「すみません…」

思わず謝ったあたしに、
「行ってきたらどうだ?

武人なら『ラグタイム』にいるぞ」

藤本さんが言った。

「えっ?」

聞き返したあたしに、
「早く行け」

そう言って藤本さんはあたしに背中を見せた。
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