今夜、上司と恋します
それからくるっと振り返った佐久間さんは、
「坂本、話がある。A会議室に来てくれるか?」
と、言って私の返事を聞かずに踵を返して歩いて行った。
話…?
って何?
私は眉を顰めると、広瀬の顔を見る。
それは広瀬も同じだったようで、訝しげな顔で私を見ていた。
「……ちょっと、行って来る」
「……。明日、11時に家に行くよ」
「わかった。広瀬、もう帰る?」
「いや、もうちょい仕事する。けどすぐ終わるかな」
「そっか。時間かかるかもだし。お疲れ様。明日ね」
「ああ、お疲れ」
広瀬に手を振って別れると、私はA会議室に向かった。
その間も、頭では呼ばれた理由を考える。
だけど、いくら考えたって思い浮かばなかった。
最近、佐久間さんとはまともに顔すら合わせていない。
ずっと会社にいないんだから当然だけど。
何かしちゃったかな。
うーん、でも、最近の仕事でのミスはなかったと思うんだが。
やっぱり考えても、これといった理由には思い当たらなかった。