今夜、上司と恋します
「いや、ぶつかったのは永戸だ。坂本が謝る必要はない」
「……いえ、私も不注意でしたので」
一応、携帯を見てたし。
でも、何で佐久間さんがそれを言うのだろうか。
彼女だからって、代わりに言うのか。
「永戸…、泣くな」
困った様な顔で、佐久間さんは永戸さんに優しく話しかける。
ああ。これ。
見た事ある。
前に私も泣きじゃくって、困らせた。
私の中で、ガラガラと何かが崩れ落ちていくのがわかった。
そりゃそうだ。
永戸さんは佐久間さんの彼女なのだから、心配するのは当然だ。
何があったかなんて私には到底知る事が出来ないけど、きっと二人にしかわからない事があるのだ。
永戸さんと、私で違うのは。
私の場合は…ただのセフレだって事。
永戸さんは彼女だっていう事。
これには天と地との差があるよ。
「こっち来い。永戸。話しよう。坂本、悪い」
佐久間さんに寄りかかる様にして歩く永戸さん。
何だろう。
余りにも衝撃的なモノを見てしまった所為か、痛いとか一切感じない。