今夜、上司と恋します


息を切らした広瀬は私の目の前に来ると、しゃがみ込む。


「大丈夫か?」

「……っ」


広瀬の優しい問いかけに私はコクンと頷く。
ふうっと少しだけ息をついた広瀬は、私の腕を掴みながら一緒に立ち上がった。


そこは、さっき佐久間さんに掴まれた場所とは反対だ。



広瀬にはすんなり触らせている私を見て、佐久間さんはハッキリと拒絶された事に気付いた筈だ。


そうやって、勘違いして欲しい。
拒絶されてると思ったら、必要以上に構って来る事なんてないでしょ?



「……佐久間さん、坂本は俺が連れていきますから。すみません。失礼します」

「……ああ、頼む」


少しだけ威嚇する様に、広瀬は佐久間さんにそう言った。



私は広瀬に抱きかかえられたまま、一度も振り返らなかった。
さっき、佐久間さんが永戸さんを抱きかかえていた時と同じ様に。
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