今夜、上司と恋します
佐久間さんはすぐに私の方を向くと、
「坂本、お疲れ。用事あったんだな、悪いな」
そう言って自分の席へと戻って行った。
何も言えなくて、私はその後ろ姿を目で追った。
「坂本、行こ?」
「え?あ、うん!」
広瀬に声をかけられて、ハッと我に返る。
すぐに笑顔を向けたけど、広瀬は笑っていなかった。
「いつも行くとこでいい?」
「うん」
行きつけの大衆居酒屋へと私と広瀬は向かう。
珍しく広瀬は黙っている。
普段はうるさいぐらい喋るのに。
「……なあ、お前と佐久間さんって何かあるのか?」
口を開いたと思ったら、藪から棒に。
何を言い出すんだ。
「何かって何」
「いや…、何か…なんとなく」
「何それ」
「男の勘ってヤツ」
「そんなのないって言ってたじゃん」
「そうなんだけどな」
あははって広瀬は渇いた笑みを零す。
だけど、すぐに真面目な顔になった。