ウ・テ・ル・ス
秋良は真奈美に一瞥もくれずに、黙ってテーブルに着くと書類をめくり始めた。真奈美は、対応マニュアル通りにコーヒーを煎れると、彼のテーブルに持っていく。
「なんで…震えているんだ。」
書類から目も上げずに秋良が言った。確かに真奈美の持つコーヒーカップが、小さくカチカチと鳴っている。
「震えてなんか…いないわ。」
真奈美は投げ捨てるようにカップをテーブルに置いた。
「それに…なんで未だに俺とタメぐちなんだ?」
秋良は顔をあげて真奈美を見た。痩せたんじゃないかしら。久しぶりに秋良の顔を間近に見た率直な印象だ。もともと彫刻のような顔だが、あごの先がとがり、彫りも深くなって、緑がかった眼光がさらに険しさを増したような気がする。きっと満足に食事も摂っていないんだ。真奈美は、彼が少し心配になって返事を返すのを忘れていた。秋良は、彼女からまじまじと見られてばつが悪くなってきたのか、視線を書類に戻した。
「もういい…持ち場へ戻れ。」
ドリンクカウンターに戻った真奈美は、手持ち無沙汰でもあるので、たいして汚れてもいないのにせっせとグラスを磨き始めた。磨きながらも、チラチラと秋良を盗み見する。秋良は、その後は書類に集中して、真奈美が居ることも忘れているようだった。
「秋良、待たせてごめん。」
しばらくすると勢いよくドアを開けて、秀麗が入って来た。秀麗を初めて見た真奈美は、とてつもない美人がいるもんだと感心するがあまり、接客対応もせずしばらく彼女を眺め続けた。
「前の打合せが長引いちゃって…。ホントにごめんね。」
真奈美は自分以外に、秋良にタメぐちの女が現れたことがちょっと腹立たしかった。
「ねえ、あなた、ぼうっとしてないで、私にもコーヒー頂戴。」
秀麗に催促されて、職務を思い出した真奈美は慌ててコーヒーをサーブする。カウンターに戻ってグラス磨きを再開した真奈美は、ふたりの会話に関心が無い振りをしながらも、耳はダンボになっていた。
「秋良、彼女なの?三室マネージャーに毎日報告させているウテルスは。」
「ああ…。」
「そんなに気になる?」
秋良は返事をする代わりに、荒々しく席を蹴って立ち上がった。
「超VIPがクリニックに着く時間だ。いくぞ。」
「ちょっと…コーヒー一杯飲むぐらいの時間はあるでしょう。」
「なんで…震えているんだ。」
書類から目も上げずに秋良が言った。確かに真奈美の持つコーヒーカップが、小さくカチカチと鳴っている。
「震えてなんか…いないわ。」
真奈美は投げ捨てるようにカップをテーブルに置いた。
「それに…なんで未だに俺とタメぐちなんだ?」
秋良は顔をあげて真奈美を見た。痩せたんじゃないかしら。久しぶりに秋良の顔を間近に見た率直な印象だ。もともと彫刻のような顔だが、あごの先がとがり、彫りも深くなって、緑がかった眼光がさらに険しさを増したような気がする。きっと満足に食事も摂っていないんだ。真奈美は、彼が少し心配になって返事を返すのを忘れていた。秋良は、彼女からまじまじと見られてばつが悪くなってきたのか、視線を書類に戻した。
「もういい…持ち場へ戻れ。」
ドリンクカウンターに戻った真奈美は、手持ち無沙汰でもあるので、たいして汚れてもいないのにせっせとグラスを磨き始めた。磨きながらも、チラチラと秋良を盗み見する。秋良は、その後は書類に集中して、真奈美が居ることも忘れているようだった。
「秋良、待たせてごめん。」
しばらくすると勢いよくドアを開けて、秀麗が入って来た。秀麗を初めて見た真奈美は、とてつもない美人がいるもんだと感心するがあまり、接客対応もせずしばらく彼女を眺め続けた。
「前の打合せが長引いちゃって…。ホントにごめんね。」
真奈美は自分以外に、秋良にタメぐちの女が現れたことがちょっと腹立たしかった。
「ねえ、あなた、ぼうっとしてないで、私にもコーヒー頂戴。」
秀麗に催促されて、職務を思い出した真奈美は慌ててコーヒーをサーブする。カウンターに戻ってグラス磨きを再開した真奈美は、ふたりの会話に関心が無い振りをしながらも、耳はダンボになっていた。
「秋良、彼女なの?三室マネージャーに毎日報告させているウテルスは。」
「ああ…。」
「そんなに気になる?」
秋良は返事をする代わりに、荒々しく席を蹴って立ち上がった。
「超VIPがクリニックに着く時間だ。いくぞ。」
「ちょっと…コーヒー一杯飲むぐらいの時間はあるでしょう。」