ウ・テ・ル・ス
抗議にもかまわず秋良が大股で部屋を出て行った。仕方なくコーヒーを諦め、秀麗も慌てて彼を追った。
『ウテルス?毎日報告?気になる?』
テーブルのカップを片付けながら、真奈美はかすかに耳にした秀麗の言葉を何度も反芻していた。
「確かに彼女は他のウテルスと違っているわよね。」
クリニックへ向かうタクシーの中で秀麗が秋良に言った。
「なんだ、また彼女の話か?」
「普通のウテルスは、遊ぶ金を使いすぎてカード破産なんてケースがほとんどだけど、彼女の場合、病身の母親とまだ高校生の妹を抱えて、父が残した負債を必死に返している。まるでドラマのヒロインよね。」
秋良は黙って外を眺めている。
「それに、決して美人とは言えないけど、清楚な感じだし…。」
「秀麗。何が言いたいんだ?」
「はっきり言えば、彼女が他のウテルスと違っていると言うよりは、彼女へのあなたの対応が他のウテルスと違っているのが心配なのよ。このビジネスを始める時に、あなたが彼女たちをウテルスと名付けた理由を忘れないで。」
「何をばかなことを。」
秋良は吐き捨てるようにそう言うと、窓の外を見ながら口をつぐんでしまった。
「私どものレディースクリニックは、国内でも最新の設備を有しておりまして…。」
守本ドクターが超VIPである夫人をアテンドしながら、クリニックを案内していた。
「こちらをご覧ください。ここは受精卵を育成するドックですが何か聞こえませんか?」
守本ドクターは、耳に手をあててドックに近づけたが、正直説明を受ける夫人はたいして興味もなさそうだった。
「そうなんです。クラシック音楽をドック内に流しております。当クリニックでは、特にモーツアルトが受精卵に安心感を与え、安定した初期分割を促すという実証例に基づき、このような設備を設けております。学術発表はされておりませんが…。」
守本ドクターが次の部屋へゲストを導く。
「ここは、奥様には直接関係ありませんが、精子採取ルームです。ここでも、精子を採取する場合、オルガニズム時における興奮度が高ければ高いほど元気な精子が採取できるという当クリニックの実証例に基づき、ご覧のように大型のモニターとサラウンドスピーカーで、多大な臨場効果を演出できるシステムを構築しました。」
「ソフトはどうされるの?」
夫人が初めて口を開いた。
『ウテルス?毎日報告?気になる?』
テーブルのカップを片付けながら、真奈美はかすかに耳にした秀麗の言葉を何度も反芻していた。
「確かに彼女は他のウテルスと違っているわよね。」
クリニックへ向かうタクシーの中で秀麗が秋良に言った。
「なんだ、また彼女の話か?」
「普通のウテルスは、遊ぶ金を使いすぎてカード破産なんてケースがほとんどだけど、彼女の場合、病身の母親とまだ高校生の妹を抱えて、父が残した負債を必死に返している。まるでドラマのヒロインよね。」
秋良は黙って外を眺めている。
「それに、決して美人とは言えないけど、清楚な感じだし…。」
「秀麗。何が言いたいんだ?」
「はっきり言えば、彼女が他のウテルスと違っていると言うよりは、彼女へのあなたの対応が他のウテルスと違っているのが心配なのよ。このビジネスを始める時に、あなたが彼女たちをウテルスと名付けた理由を忘れないで。」
「何をばかなことを。」
秋良は吐き捨てるようにそう言うと、窓の外を見ながら口をつぐんでしまった。
「私どものレディースクリニックは、国内でも最新の設備を有しておりまして…。」
守本ドクターが超VIPである夫人をアテンドしながら、クリニックを案内していた。
「こちらをご覧ください。ここは受精卵を育成するドックですが何か聞こえませんか?」
守本ドクターは、耳に手をあててドックに近づけたが、正直説明を受ける夫人はたいして興味もなさそうだった。
「そうなんです。クラシック音楽をドック内に流しております。当クリニックでは、特にモーツアルトが受精卵に安心感を与え、安定した初期分割を促すという実証例に基づき、このような設備を設けております。学術発表はされておりませんが…。」
守本ドクターが次の部屋へゲストを導く。
「ここは、奥様には直接関係ありませんが、精子採取ルームです。ここでも、精子を採取する場合、オルガニズム時における興奮度が高ければ高いほど元気な精子が採取できるという当クリニックの実証例に基づき、ご覧のように大型のモニターとサラウンドスピーカーで、多大な臨場効果を演出できるシステムを構築しました。」
「ソフトはどうされるの?」
夫人が初めて口を開いた。