ウ・テ・ル・ス
真奈美が口で冷ましたスープを、素直に口に含む秋良。この日を境に、彼らの関係性が徐々に変化していった。
秋良と暮らすマンションのそばのスーパー。野菜売り場で、真奈美は悩んでいた。思いのほか野菜が高い。秋良に野菜の料理を食べさせたかったのだ。
回復した秋良が仕事に出る朝、スーツに着替える前に彼は黙ってキッチンのダイニングテーブルに座った。驚く真奈美に視線で『会社に遅れる。はやく朝飯を出せ。』とサインを送る。慌てて真奈美が準備した朝食を、新聞を読みながら黙って食べ始めたのだ。それ以来、秋良は朝晩のほとんどを家で食べるようになった。
「真奈美、いい加減野菜売り場の前で悩む癖はやめろ。」
振り返ると秋良がいた。そう、秋良が初めて真奈美のスープを口にした以来、変わって来たことがあとふたつある。帰ってくる時間が日に日に早くなってきたことと、名前で彼女を呼ぶようになったことだ。
「あら、早いじゃん。」
「仕事はあるんだが、家でやろうと思って…。」
「それじゃ夜食も考えなくちゃね。」
ふたりは並んでスーパーの各売り場を巡った。前のように、秋良が無造作に買い物かごに食材を投げ込むようなことはしない。今ではメニューも、買う食材の品定めもすべて真奈美にまかせていた。
「いつも思うんだが、真奈美の料理はちょっと薄味じゃないか。」
「そう…。秋良さんは味が濃い方がいいの。」
「もう少しな…。」
「わかった。しかし意外だわ…食事に関心のない人が、私の手作り料理をちゃんと味わっていたなんて。」
秋良は笑って返事を返さなかった。最近よく話すようになったふたりだが意図的に仕事の話しは避けていた。やがてやって来る日を思い出させるような話しは、ふたりにはちょっと重たいようだ。
「おい真奈美、デザートにキウイが食べたくなった。」
「ちょっとぉ、フルーツ売場の前で言ってよね。戻らなきゃならないじゃない。ホントに我がままなんだから…。」
秋良と暮らすマンションのそばのスーパー。野菜売り場で、真奈美は悩んでいた。思いのほか野菜が高い。秋良に野菜の料理を食べさせたかったのだ。
回復した秋良が仕事に出る朝、スーツに着替える前に彼は黙ってキッチンのダイニングテーブルに座った。驚く真奈美に視線で『会社に遅れる。はやく朝飯を出せ。』とサインを送る。慌てて真奈美が準備した朝食を、新聞を読みながら黙って食べ始めたのだ。それ以来、秋良は朝晩のほとんどを家で食べるようになった。
「真奈美、いい加減野菜売り場の前で悩む癖はやめろ。」
振り返ると秋良がいた。そう、秋良が初めて真奈美のスープを口にした以来、変わって来たことがあとふたつある。帰ってくる時間が日に日に早くなってきたことと、名前で彼女を呼ぶようになったことだ。
「あら、早いじゃん。」
「仕事はあるんだが、家でやろうと思って…。」
「それじゃ夜食も考えなくちゃね。」
ふたりは並んでスーパーの各売り場を巡った。前のように、秋良が無造作に買い物かごに食材を投げ込むようなことはしない。今ではメニューも、買う食材の品定めもすべて真奈美にまかせていた。
「いつも思うんだが、真奈美の料理はちょっと薄味じゃないか。」
「そう…。秋良さんは味が濃い方がいいの。」
「もう少しな…。」
「わかった。しかし意外だわ…食事に関心のない人が、私の手作り料理をちゃんと味わっていたなんて。」
秋良は笑って返事を返さなかった。最近よく話すようになったふたりだが意図的に仕事の話しは避けていた。やがてやって来る日を思い出させるような話しは、ふたりにはちょっと重たいようだ。
「おい真奈美、デザートにキウイが食べたくなった。」
「ちょっとぉ、フルーツ売場の前で言ってよね。戻らなきゃならないじゃない。ホントに我がままなんだから…。」