ドナリィンの恋
「ああ…、ところで、今日、ジョンはどこに行ってるんだっけ?」
「確か、テレビの仕事で、ケソン・シティのお店だったと思うけど…。そうだ、ドナも一緒のはずね…。そう言えば帰国したあとドナとはどうするの?」佑麻は何も答えなかった。
「ドナと何かあったの?」
「いや、べつに…。それじゃな!」
「ちょっと…!」 
 佑麻は麻貴のしつこい質問攻めにあう前に、電話を切った。
 佑麻は帰国の荷物のチェックをし、マム、ミミ、ソフィアにお礼とともに別れの挨拶をした。ソフィアは泣きながら、佑麻にしがみついた手をなかなか解こうとしなかった。タクシーを拾いに通りへ出る道すがら、街の人々に声を掛けられ、それぞれに別れを惜しんだ。ドミニクは、佑麻を兄弟と呼び、硬く握手を交わした。このままドナに会わずに帰っていいのか。何度も自問自答するが、では会ってどうするのかわからない彼は、ただ帰国の便に間に合うように、空港に向かうしかない。
 タクシーに乗り込み、行き先を告げる。シートに落ち着いた彼は、パスポートを確認した。パスポートを開けると、メモがハラリと膝に落ちた。
『Thank you for everything, Donna.』
 あの時、成田空港でのメッセージと同じだ。自分はあの時、ドナを目の前にして何も言えず別れて、結局ドナを追いかけてここまできたのではないか。このまま帰ってはあの時と何の変りもなく、また同じことになるのは目に見えている。ドナに会って何と言ったらいいかわからないが、とにかく顔を見て心に浮かぶ言葉を伝えよう。恐れずに、自分の心の決着を付けてから帰ろう。佑麻はドライバーに行き先の変更を告げた。
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