ドナリィンの恋
 佑麻は、AEDのふたを開け、電源ボタンを押す。そして「マムごめんね。」と言いながらマムの衣服を取り除き、胸をはだけた。 電極パッドを袋から取り出し、シールで胸部にしっかりと貼り付ける。心臓をはさみ、ひとつは右前胸部、もうひとつは左側胸部の位置。電極パッドを貼り付けると佑麻は「体に触れないでください!」とすべての人を遠ざける。自動的に心電図の解析が始まった。やがて、AEDが電気ショックを加える必要があると判断し、自動的に充電が開始される。数秒の後、充電が完了すると、「ショックします。みんな離れて!」と再び佑麻は周りの注意を促し、誰もマムに触れていないことを確認すると、ショックボタンを押した。マムの体が瞬間痙攣する。それを見て佑麻は、ただちに胸骨圧迫を再開。心肺蘇生法を再開して2分、再びAEDは自動的に心電図の解析を始める。同じ手順を繰り返し、2回目のショックの後に、マムがわずかながらうめき声を出した。そして、その声に呼ばれたように救急隊員が到着。マムはAEDを装着したままストレッチャーに乗せられ、病院へと搬送された。救急車には、ドナと佑麻が同乗した。ドナは心配そうにマムの顔を覗き込み、付き添う佑麻はそのドナの手をしっかり握っていた。

 マムが運ばれた集中治療室のドアの外で、ドナは小さく震える肩を佑麻にだかれながら待った。やがて、ドアが開きドクターが出てくると、彼女に告げる。
「大丈夫ですよ。心肺は安定しました。後遺症もないようです。」
 その言葉を受けて緊張が解けたのか、ドナは佑麻の腕の中で泣きじゃくる。佑麻も笑顔のドクターから状況を察して安堵のため息をついた。ドクターは言葉を続ける。
「汗に濡れた服で、急に強い冷気を浴びたので低体温症になったのでしょう。一般的に、心肺停止から1分ごとに救命率が約10パーセント低下すると言います。6分後には、救命率が30パーセント代になり、命を救うことが難しくなる。その点、今回の場合は、迅速な救命措置が功を奏したようですね。1週間ほど入院して安静にしていれば、家に帰れるでしょう。」泣きじゃくりながらも、ドナは何度もドクターにお礼を言った。
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