ドナリィンの恋
「これを私のフェイスブックに載せるからね。もし私の身に何かあったら、あなたを犯人だと世界中の人が知ることになるわ。覚悟しなさいよ。じゃ、行きましょう。」
 ジョンも運転手も記念写真の意味を知って、首を振りながら麻貴の後ろに従った。麻貴は再度リムジンに乗りこんだものの、ジョンと話しもせずに自分のスマートフォンの操作に忙しい。しばらくしてジョンの家に到着した。たどり着いた家は、豪邸どころか、麻貴の想像をはるかに超えた『宮殿』だった。実際彼女も帰国後に、ジョンの家を『マニラのベルサイユ宮殿』と友達に説明したほどだ。

 マムが病室で目を覚ました。手を握っていたドナがそれに気づき、喜んで呼びかける。マムは、周りをゆっくりと見回して、自分の置かれた状況を思い出しているようだった。ドナは、早口に何が会ったのかを説明した。マムは、ソファに横になって寝ている佑麻を認め、口をゆっくり動かして話し始めた。
「うるさいよドナ、少しお黙り。天国でお前の父さんと久しぶりに会って楽しんでいたのに…。そこから無理やり連れ戻したのはあの男かい?」マムはあごで佑麻を指し示す。ドナはうなずいた。
「そうかい…。図々しく私の胸を触っている男がなんとなく記憶にあるが、それもあの男かい?」
「マム!」
「Sabi ko na nga ba salbahe ka eh.
(やっぱり…。こいつが悪い男だとは分かっていたけどね…。)」
 マムはそう言うと、また眼を閉じて眠りについた。

 ジョンの大きなデスクにある電話が鳴った。ジョンのオフィスはマカティ(Makati)シティのビジネス街にあり、その中でも人目を引く高層ビルの一画に設けられている。実はこのビル全体が彼の祖父が創業した会社のものである。会社は、彼の祖父が小さなアイスクリーム屋から全国トップシェアのファーストフードチェーンに育て上げたものであり、今は彼の父が社長、彼はマーケティング室長を務めている。電話を取ると、秘書がパレス、彼の家のことを皆そう呼ぶのだが、からの電話だと取り次ぐ。
「坊っちゃま、お連れになった女性のお客さまを何とかしてください!」執事長からの電話だった。
「どうかしたのか?」
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