ドナリィンの恋
「医師保健法違反の容疑(無資格者の医療行為)」
 男たちは周りの抗議に構いもせず佑麻を連行しようとした。アシスタントで来ていたドミニクも男たちに飛びかかるが、屈強な男たちに敵うべくもなく一蹴される。場内から沸き起こるブーイングで、ホールの窓ガラスが揺れた。ドナは叫びながら佑麻にしがみついて離れない。男たちは乱暴にドナを引き離すと、無情に佑麻を引き立てた。ドミニクの手を借りて立ち上がるもまだ取り乱すドナに、佑麻は目で、『無理に抵抗するな、大丈夫だから』とサインを送った。

 ジョンはパレスの中庭で、信じられない光景を見た。祖母の死後、かたくなに外界との接触を絶っていた祖父が、麻貴と楽しそうに庭いじりをしているのだ。しかも時折、声をあげて笑ってさえいる。祖父が気づいてジョンを呼び込んだ。
「ミス・マキから聞いたよ。どうやらわしが仕込んだフェンシングが役に立ったようだな。」
「ええ、そのようです。今更ですが、お礼を申し上げます。…ところで、外の日差しはお体に障りませんか?」
「いや、たまに麻貴さんに連れ出してもらうと、気分も明るくなるんでな。」
 麻貴と祖父はお互いを見合いながら笑った。ジョンは、麻貴の側に近づき小声で囁く。
「どんな魔法を使ったのですか?」麻貴は笑ってとりあわなかった。
「ところで、ミス・マキ。写真の場所がわかりましたよ。しかも、写っている彼の居場所もわかりました。」
「えっ、本当に!」
「彼は今、マラボン(Malabon)市警の留置所に居ます。」

 佑麻はなぜか灼熱の砂漠を歩いていた。どこかへ行かなければと焦っていたが、そのどこかがわからない。歩いて、歩いて、ついに体の水分を使い果たし、砂丘の底に転げ落ちた。薄く目を開けると、衰えを知らぬ太陽が容赦なく佑麻を照りつける。水が欲しい。しかし、こんな砂漠には一滴の水もあるわけがなかった。日差しの中から、ふたりのエンジェルが舞い降りてきた。ああ、いよいよ自分もお終いかと観念した時に、エンジェルの肩に水筒が掛かっているのを発見する。
「その水を下さい!」
 最後に残った力を振り絞って叫ぶ。しかしエンジェル達は、佑麻が言っている言葉がわからないようだった。
「お前らエイリアンか? その水をくれと言っているのが、わからないのか!」
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