ドナリィンの恋
 しかし、やはりエンジェルは首を傾げて、佑麻を不思議そうに見ているだけだ。ああ、言葉が通じればあの水を飲めるのに。そう思いながらも意識が遠のいていった。その時、突然どこからかメリー・ローズが現れた。メリーが佑麻に微笑みかける。そうだ、彼女はエンジェルと話せるのだ。
「メリー、エンジェルにその水を飲ませてくれと言ってくれ。」
 彼女は笑顔でうなずくと、佑麻では理解できない言葉でエンジェル達に話しかけた。ようやく理解したのか、エンジェル達は、佑麻に水筒を差し出す。佑麻は、喉を鳴らして一気に水筒の水を飲み干した。やがて力を取り戻した佑麻が立ち上がる。みると、メリー・ローズが彼の進む方向を指差していた。
「そっちにいったい何があるんだ、メリー。」彼女は佑麻の問いかけには答えようとせずに、エンジェル達とおしゃべりしながら、天空へと登っていく。
「教えてくれ、メリー!」そう叫んだ自分の声に驚いて、佑麻は目を覚ました。今度は、彼は留置場に居た。

 ナボタス・シティに隣接するマラボン・シティ、そこには中規模な警察署があった。今日はその入口に、ドナやドミニクとともに群衆が取り囲んでいる。それは佑麻逮捕への抗議の集団だった。するとその集団に割って入るように、黒いリムジンが横づけされた。運転手がドアを開きリムジンから出てきたのは、スーツに身を固めたジョン、軽快なデニムパンツの麻貴、そして大きな書類カバンを抱えた弁護士であった。3人は入口で止められている群衆を尻目に、警官の敬礼を受けて建物の中に入っていく。ドナは女性が日本人でしかもそれが麻貴であると認めると、さらに心が乱れた。
 麻貴は建物の奥に進み、鉄格子の中に佑麻を発見した。数週間ぶりに見た彼は、日に焼けた肌に、身体のあちこちの筋肉のエッジが鋭くなって、以前に比べると精悍さを増したように感じる。彼は膝を抱え床の一点を見つめていた。
「佑麻!」急に日本語で自分の名前を呼ばれ、彼は驚いて声の主を見た。
「麻貴!何でお前がここに?」
「何でじゃないわよ!とにかく弁護士さん連れてきたから、何でこうなったか説明して。」
 麻貴は、ジョンが気を利かせて連れてきてくれた弁護士を佑麻に紹介する。
「説明ならドナにしてもらおう。ドナを呼んでくれ。」
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