ドナリィンの恋
 佑麻は、今自分たちがやりたいと思っている事をジョンに説明するようにドナに促した。ドナは、いきなり切り出してきた彼の意図が良くつかめなかったが、先日話しあった講習会のことを説明する。その間、佑麻は日本語で麻貴に説明した。一通りの説明を終えると佑麻がジョンと麻貴に、メディカルアドバイザリースタッフについては、ドナの大学の教授がボランティアスタッフを紹介してくれることになったと付け加え、そして続けた。
「そこでご相談なのですが、ジョンさんの会社に、このプロジェクトのオーガナイザーになって頂き、店舗の一部を講習の間だけ会場として提供して頂くことはできないでしょうか?」
 佑麻の突然のプロポーザル(提案)にドナと麻貴は顔を見合わせた。ドナは心配して佑麻の腕を取り、佑麻が大丈夫だよとその手に自分の手を重ねた。ジョンは、プロポーザルの内容自体には、たいして驚きはしなかった。しかし、ドナと佑麻の振る舞いを見ながらも、それでも庇護者のごとく佑麻を見つめる麻貴の視線を認めると、今まで彼の生涯で感じたことのない理屈の無い怒りが、胸に込み上げてきたのだ。麻貴、君はこんな仕打ちをされてもまだ彼への思いが断ち切れないのか。いったいこの男のどこがいいんだ。数時間後に、冷静になったジョンはそれを嫉妬だったと認識し、下品なことをしてしまったと後悔することになるのだが、その時はまだ本能の渦の中に居た。
「残念ながら、ご期待にはそえません。」彼は、インターフォンを押すと、とげとげしい言い方で秘書に言った。
「お客様がおかえりになる。」

 ドナは、秘書に送られて会社を出ると、開口一番、佑麻を責めた。
「お礼に来たのに、突然相談を切り出すものだから、ジョンが怒ってしまったじゃない。」
「いや、あんなに怒る方が変だろう。別に失礼なこと言ったわけじゃないんだから。」
 ふたりの口論に麻貴が割って入る。
「私は、佑麻やドナがやろうとしている事はいいことだと思う。それにしても、ジョンの断り方が変ね。彼らしくないわ…。ねえ、この話少し私に預けてくれない。ジョリービーの名付け親に相談してみるから。」
「えっ!」
 佑麻もドナも、そう簡単に言い放つ、麻貴の底知れないネットワークに度肝を抜かれた。

「そうか、そんな態度をあの子は取ったのか。」
 麻貴の話を聞いたトニー(創業者・ジョンの祖父)は笑いながら言った。
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