ドナリィンの恋
 ジョンはカンファレンスルームに集まった記者達に、プロジェクトのステートメントを読み上げていた。ステートメントは、ドナが書き上げたものである。プロジェクト名が『エンジェル・トーカー プロジェクト』と発表された。命名者は佑麻である。市民の側にいてナースや医療者とのスムーズな橋渡しができる人をエンジェル・トーカーと呼ぶ。そしてそのような人をひとりでも多く育てる。ジョリビー・フード・コーポレーションは、このプロジェクトのオーガナイザー(主催者)になるとともに、講習会場として各地域の店舗スペースを提供する。講習会は、開催地医療機関からのボランティアスタッフの協力を得ておこなう。また、定められた複数のプログラムの講習会を終了した市民には、エンジェル・トーカー ワッペンを支給し、市民にその役割を公示する。澱みなく説明するジョンの発表を、ドナ、佑麻、麻貴は記者席から頼もしそうに見ていた。
「さらに…。」ジョンは続ける。
「当社は、このプロジェクトの一環として、チャリティーメニュー、『エンジェル・トーカー セット』を販売いたします。これは、売上金の一部を、難病と闘うこども達とその家族を支援する基金として充当されるものです。」
「素晴らしいわ!ジョンのアイデアなの?」
 感激するドナの言葉を、麻貴が軽く受け流す。
「いいえ、私のアイデアよ。ジョンの方の要求が多かったので、私の方も一つ増やしてやったのよ。」
 ドナも佑麻も麻貴の言っている意味が理解できずに顔を見合わせた。
 ジョンの説明がさらに続く。
「それでは、ここで大切なお客様をみなさまにご紹介させていいただきます。このプロジェクトの生みの親、ミス ドナリン・エストラーダです。」
 突然の指名に驚きながらも、拍手に促されてドナは席を立って挨拶した。これは、麻貴と佑麻がジョンに頼んで仕組んだサプライズだった。

 第1回エンジェル・トーカー講習会は、ナボタス・シティホールの前にあるジョリービーで開催された。ドナと佑麻は家の近くの開催ということもあり見学に来ていた。会場は、近隣に住む大勢の人々で埋め尽くされていて、熱のこもった講習が展開された。やがて講習会も終わりが近づくと、会場の様子を見ながら佑麻が日本語でポツリと言った。
「そろそろかな…。」
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