宝物を見つけた夏休み ~Dear アタシ~
まだ幼さが残るものの,声変わりしたであろう低い目の声とチカと背丈が変わらなさそうな少年は,チカを見下ろし更に喋り続けた。
『あっアンタ俺が好きで見たとか思わんといてなっ!俺はそんな貧相な身体に興味ないしバァチャンに起こして来て言われただけやで。
だいたい何時やと思ってるねん。俺とバァチャンなんか六時には畑に出て~~』
最後の方はチカには,もう聞こえていなかった。
ただ,貧相な身体だとか馬鹿にされたような発言に怒りの炎をメラメラ燃やしていた。
『~~まぁ,そんな訳やから。早よ顔洗って,その貧相な身体を隠してから和室に来いよ。』
少年は早口で喋ると,急かすようにひらひらと右手を胸の前で振り,チカの寝ている部屋を出ていった。
残されたチカは,怒りと訳の分らない呆然とした気持ちとで,暫く布団の上で座ったままであった。
(何…今の…??)
そしてロングキャミソールから自分の胸がだいぶ見えている事に気付いて,泣きたいような気持ちになるのだった。
(胸まで見られて貧相って何なのよ~っ!アイツは絶対Bカップの敵だっ!馬鹿にされた!悔しい~)
これがチカとカズマの最悪の出会いであった。

顔を洗った時につけた太いヘアーターバンをつけたままチカは縁側に面した和室に入っていった。
白いゆったりした長め丈のTシャツに黒い五分丈のカルソン姿である。ゆったりした服にしたのは,先程の貧相発言に傷付いたからとは誰も思うまい。
『あっ来たな。寝ぼすけネェちゃん。』
和室の畳に寝転んでテレビを見ていた少年はチカの姿を見つけると,軽く微笑み,軽い身振りで立ち上がり,何も言わないチカの前まで近付いてきた。
『俺はカズマ。夏休み中はよく会うことなるなぁ~。宜しくな。』
並んで立ってもチカと同じぐらいの身長だからカズマも165cmぐらいだろう。
わざわざ立ち上がって挨拶したカズマの顔を見つめてチカは,(案外イケメンなんぢゃん…)なんて思ったりしてから,先程の失礼な振るまいを思い出し,少し不機嫌そうな声で応えた。
『私はチカ。高1。まぁ,よろしくね!』 黒髪の右前髪を少し長めに伸ばしたカズマの切れ長の目が微笑んだ。
『さっきの事怒ってるんやろ。はははっ!すごい顔してたでぇ~!』
チカは心の中で叫んだ。(ムカつく)
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