俺様常務の甘い策略
多分、これで沙羅に手を出すことはないだろう。

踵を返して沙羅のところに戻ろうとすると、涼太に呼び止められた。

「おい、あいつ……泣かすなよ」

涼太の方を振り返り、にっこり微笑みながらこいつの言葉を訂正する。

「颯介だよ。「おい」って名前じゃない」

沙羅を大事に思う想いはこいつも俺も同じはず。

これから親戚になるんだし、許してやろうと思った。

「……お前……」

俺の言葉に驚いたのか、涼太が目を見開く。

「俺、有栖川尊の小説、結構好きだよ」

そう告げて俺は沙羅の待つ部屋に戻る。

次に会う時は、涼太ともっと語り合う事が出来るかもしれない。

部屋に戻ると、彼女は布団にうつ伏せになって寝転んでいた。

注意深く様子を窺う。

さっきのショックからはだいぶ立ち直ったようだ。
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