七月の魔法使いと黒猫
わたしが黙ってみていることに気がついたのか、母が顔を上げる。
あら……まあ。
お母さんったら、シワがないわ。
顔も少し若返った印象を受ける。
母はわたしに、心底楽しそうに笑いかけた。
なんでそんな嬉しそうなのかしら。お隣のグレースさんが、お母さん手作りのパイを盗んで、お母さんをずいぶん妙な感じでほめたからかしら。
はっと意識がしっかりした。
そんなはずない。
あの誇り高いグレースさんが食べ物を盗むはずなんてない。
盗んだのは下の階のいたずら坊主だったわ。
あら、でもそうだったかしら?
なんだか空腹を感じる。
妙な感じ。
これは……、夢のせいだからかしら。
思考がごちゃごちゃするの。なんだかわけがわからなくなるわ。
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