麗雪神話~青銀の王国~
無事を喜び、再会を喜び、手を携えて逃げるべき場面なのに。

「今は君を連れ出せないから、俺はもう行く」

ディセルがふいっと顔をそむけて静かに言った。

それをセレイアは売り言葉と受け取った。

「勝手にしてよ! 私こそもう行くわ!」

ディセルと喧嘩なんて、はじめてのことだった。

セレイアは溢れそうになる涙をこらえ、踵を返した。

あれだけ会いたいと思っていたディセルにやっと会えたのに、なんでこんなことになっているのだろう。

なんで優しい言葉をかけることができないのだろう。

今振り返って、謝れば、すべてやり直せるだろうか?

でも、今振り返ったら、涙に気付かれる。そんな弱さを、見せたくはなかった。

「まあ、いけませんわ、セレイア様」

その時聞こえるはずのない声に呼び止められ、セレイアは硬直した。

懐かしい声。

聞き間違えようのない、澄んだ声。

セレイアがおそるおそる声のした前方を見やると、そこには―――

「うそ…フリム…フリムなの?」

故郷トリステアに置いてきた親友、フリムヴェーラの姿があった。
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