麗雪神話~青銀の王国~
セレイアの乙女心をときめかすに十分なほど、女王と青幻獣は、一幅の絵のように美しかった。

複雑に結い上げた、空の青の色をした長い髪。どこか憂いを帯びた同色の瞳。顔立ちはレティシアによく似ていたが、まとう雰囲気が大人っぽく、とてつもなく色気があった。そのかたわらに控える青幻獣は、セレイアの見たものよりもふたまわりは大きく、たたんだ翼が銀色に輝き優雅だ。

「わらわが、女王フィーヴルである。そなたたちはラピストリ候補として選ばれた、名誉ある娘たち。この中から次代の女王が生まれると思うと、わらわはそなたたちが愛おしいぞ。誇りをもって、明日からの試練に挑むように」

少女たちは感激して、一斉に「はい!」と頷いている。

(うわあ…なんか帰してくださいってすごく言いにくい雰囲気…)

けれど雰囲気にのまれている場合ではない。

セレイアは勇気を出して声をあげた。

「あの、女王陛下! お願いがございます!」

ざわ、と周囲が色めき立つ。

作法的には、少女たちの方から女王に声をかけるなど、言語道断なのだ。

―そんなことに構っていられるか。

むしろそれで機嫌を損ねて候補でいられなくなったら、それこそ本望だ。
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