いつかウェディングベル
甘い新婚旅行に来ていた俺達は一日目の夜は眠ることなく過ごしてしまった。
朝方近くまで抱きしめあってはキスし話も弾んで楽しい夜になった。
これ幸いと俺と別れた後の話を聞かされていた。
辛く悲しい頃の話なのに、生まれたばかりの芳樹の話しにとても幸せな話を聞いているように感じた。
芳樹が産まれた時の産声や、新生児室に眠っていた時の芳樹の足が他の子より大きかったこと、俺が体験できなかったことなど、話は聞いていて尽きなかった。
俺はそんな大事な時間を一緒に過ごせなかった。
「芳樹がいては仕事は難しかっただろう?」
「そうね。だけど、今の会社に入れて助かったのよ。会社に保育所があるし、職場の人達の理解もあったし。」
そこで、加奈子の言葉が止まった。
やはり辛い時期だったのだろう。思い出して言葉に詰まったのだろう。
俯いて黙りこんだ加奈子を抱きしめた。
「芳樹が小さかったから荷物が多くて」
「吉富だろう?」
言い難そうに俯いたまま頷いた。
小さな芳樹を抱え大変な時に加奈子を手助けしたのは吉富だ。
「荷物だけじゃなくて、体調が悪い時は送り迎えもしてもらったことあるし、病院へも連れていってもらったことがあるわ。」
「それなら同僚や職場の先輩にある行為だから気に止めることはないさ。」
本来なら俺がするはずのことを吉富がしていた。
それを加奈子は後悔しているのだろう。
「俺が加奈子を捨てた事がそうさせたんだ。俺の所為だ、加奈子の気にすることじゃない。」
未だにあのときの事が心に傷として残っているんだ。