いつかウェディングベル
折角俺の隣で幸せな顔をして眠る加奈子を目覚めさせたくはなかったが、会社からの緊急呼び出しは応じるしかない。
加奈子の額にキスして優しく目覚めさせようと思っていたが、加奈子に抱き締められ俺の理性は一度に吹き飛んでしまった。
つい甘い唇にキスをし離れるのが寂しくて何度も重ねた。
加奈子は何時もに増して甘い蕩けるようなキスを求めてくる。
期待に応えたいがここは欲望を理性で押さえ込んで加奈子の体を起こしベッドに腰かけさせた。
「透?」
「甘い時間も終了だ。」
「ええっ?!」
「緊急事態発生のようなんだ。」
少し眠そうに目を擦る加奈子の手を握りベッドから立たせた。
最初はこの旅行に渋っていた加奈子だったのに、今では甘い時間を過ごせないことに少し剥れていた。
可愛い妻の我が儘はとても魅力的でこのまま二人で過ごしたいけれど、専務と言う立場上そう言うわけにもいかない。
「これで、機嫌直してくれ。」
加奈子の唇にキスをするとそのまま抱きつかれ押し倒されてしまった。
珍しく積極的な加奈子にドキリとさせられると俺の理性に自信が持てなくなる。
すると、ついつい何度も唇を重ねあうといつの間にか加奈子の服の下から肌を探っていた。
もう少しだけ新婚旅行気分を味わいたいと加奈子の背中に手を回し、温かい肌を探るように抱きしめ深くキスしようとした時だった。
加奈子は俺の上から降りて何事もなかったかのように立ち上がった。
俺は寝転んだまま起き上がれず顔だけが加奈子の姿を追っていた。
「加奈子?」
もう少しだけ甘い時間を過ごせるかと期待したのに加奈子はさっさと着替え始めた。
今のこの状況が飲み込めずに俺は呆然としていた。
「緊急事態よ、起きなさい。」
笑って着替える加奈子に俺はしてやられたと初めて気付いた。