いつかウェディングベル
加奈子は父親の事故の為に病院へ行くことを理由に暫く休暇を取らせている。
そんな加奈子が俺が受けた緊急呼び出しに一緒に社へ戻れば一緒に過ごしていたのではないかと疑われてしまう。
早く加奈子との結婚を公表したいがそれには時期が不味すぎる。
流石に、親の交通事故に便乗して弱った加奈子を狙ったように思われるのは本意ではないし、過去の事もあるからこれ以上加奈子に辛い目にあって欲しくない。
きっと、芳樹がいることで俺達の過去を疑ってくる輩がいるはずだ。
その時に加奈子を傷つけたくない。
だけど、過去は変えられない。
もう少しだけ俺達のこは秘密にした方が良さそうだ。
運転するハンドルを持つ手に目をやると左手薬指に結婚指輪をはめていることに気付いた。
今はまだ外しておこう。
外した結婚指輪を俺は失くさない様に財布の小銭入れの中へと仕舞った。
そして会社へと行くとまずは自室である専務室へと向かった。
「申し訳ありません。社長が不在でしたので専務へ緊急連絡を入れてしまいました。」
「それで、部長はどう采配しているのか連絡は来ているのか?」
「原因は突き止めましたが後処理に時間が掛かるようです。」
「いったい何が起きたんだ?」
「誤植のようです」
「誤植?」
今回の企画商品には全て統一された管理用のバーコード入りのシールと商品名が印字されたシールがある。
それらを全ての商品一つ一つに貼付し注文をもらった客へと配送することになる。
第一段階として準備された倉庫に保管されている商品分のバーコードと商品名の2種類のシールに誤植があることが分かった。
「印刷所は勿論ストップをかけているだろうし、大急ぎで訂正したシールの印刷を終えているのだろう?」
「部長からはそう聞いています。」
「販促課へ行ってくる。」
印刷会社の単なる印刷ミスでは済まされない事態だ。
印刷のやり直しにシールを貼りなおす手間を考えれば少し痛い出費になる。
経費はともかくも通販の販売予定期日までに間に合えば十分だ。