いつかウェディングベル
「専務! お忙しい所申し訳ありません。」
相変わらず俺の顔を見ると慌てて取り乱そうとする部長だ。その部長とセットになって疲労困ぱいする課長の姿はここにはない。
「販促課も暫くは忙しくなるだろうが皆で一丸となって頑張ってくれ。」
「そのつもりでいます。」
「それで、印刷会社の方は今どうなっている?」
「訂正した分のを印刷しなおしていますが、取りあえずの分として今倉庫に保管中の商品分と、第2段の納品予定の分までを印刷して貰っています。」
「訂正分の校正は間違いなく問題ないんだな? データを受け取ったのは誰なんだ?」
文字等の校正はミスを減らす為に一人に任せてはいない。
印刷会社へも複数の目を通すのを基本としてもらっているし、我が社でも複数の人員で校正作業をしてもらうことにしている。
こんな単純ミスをそう度々起こされては敵わん。
「部長、仕入れ先全てに連絡は入れました。」
「電話で確認が取れたのか? 江崎」
「はい。手元の貼付用シールの廃棄処分をお願いしました。数日中に新しいシールを送るのでそれを貼るようにお願いしています。」
ついこの前までのんびりと仕事をしていたようだが、いざとなると江崎も普通に仕事をしているのだと当たり前のことだが少し驚いてしまった。
「専務? どうなされたんですか?」
「あ、いや。倉庫の商品は誰がシールを貼る予定だ?時間を考えればそれなりの人数が必要になるだろう?」
「それが、吉富さんは2-3人いれば十分だからと言うんですけどね。でもそれだと時間が掛かり過ぎます。全員でやれば早く済みますからその方が良いと思うのですが。」
江崎の言い分も分からなくはない。販促課全員と倉庫の手の空いている者でやればあっという間に終わる作業ではある。
しかし、それでも数日は事務所が空になってしまうのは、あまり好ましいとは思えない。
そうなると吉富の意見に賛成しなければならない。
「分かった。社内には最低2人は人員を残しておけ。後は、倉庫で作業をして貰う。」
部長にそう指示を出すと俺は一度倉庫の方へと様子を見に行くことにした。