いつかウェディングベル

倉庫は車を走らせて1時間ほどの所にある。


少し田舎でゆったりとした風景の心が和むような場所だ。


トラブル一つない日の昼下がりならば心地よい時間を過ごせようものだが、今日はそんな気分を味わえないのが残念だ。


倉庫に到着すると駐車場には印刷会社の車が停まっていた。


急いで倉庫の中へと入って行くとかなり騒々しい状態になっていた。



「どうしたんだ?」



俺が声を掛けるとそこに居合わせた社員らが俺の方へと顔を向けた。


向けられた顔に表情はなく女性社員は少し青白く感じてしまった。


何かまた問題が起きたのかと俺は少し不安になっていた。



「専務?!!」


俺に気付いた社員の一言で辺りは静まり返ってしまった。



皆が囲んで見ていたのは、吉富と印刷会社の社員が向かい合って話し合いをしていたところだ。


だが、よく見てみると吉富は怒りで顔が紅潮し、半分座り腰状態の印刷会社の社員は必死に謝罪をしている様子だった。



「吉富、どうしたんだ? そちらは印刷会社の方じゃないのか?」


「専務。それが、貼付用のシールが出来上がるのに時間が掛かるそうなんです。それじゃあ期日までに間に合わない。」


「それは何故だ? 理由はなんだ?」



特別な印刷物を依頼しているわけではないし、当社とは長年の取引もありこの手の貼付シールに関しても同じ期間だけ発注してきた。


今更、取り立てて問題にするようなことは何もないと言うのに。



「申し訳ありません。こちらのミスで同じ材質のシールの手配が出来ていなかったのです。誤植ミスしたシールを見て頂くと分かりますが薄手で光を通せば少しですが裏写りしてしまうんです。」


「それは、誤植ミスしたシールも今回手配したシールも全て裏写りする為に使用出来ないと言うことなのか? それでいつも使っている素材のシールの入荷予定はいつなんだ?」


「それが、数日必要でして。新しく頂いた注文分とこれまでの分の注文も合わせるとかなりの数量になりますので。」


管理用のシールだから貼付しないわけにもいかないが、他の部署との印刷物の取り合いも出来ないし、ここは穏便に話し合う必要がありそうだ。
< 232 / 369 >

この作品をシェア

pagetop