いつかウェディングベル
「他の部署の発注分があるだろう?その在庫はどれ程になる?」
「小型商品と大型商品のシールがありますが、小型商品向けのは既にそれらは一括して印刷しますので使えるものはありません。ですが、大型商品向けの大判のシールでしたらまだ印刷はしていませんが。」
大判ならば裁断して使えないことはないがその部署に相談する必要がある。
ここは冷静な蟹江に任せたが良さそうだ。
「蟹江、その部署へ行き事情を説明してこちらで使わせてもらえるかを相談してこい。」
「分かりました。」
「それから、吉富、商品数は全部でどれくらいになるのか商品毎に数を全て出してくれ。」
誤植の痛手より貼付用シールの不足の方が一大事だ。
よりにもよってこんな初歩的なミスをするとはこの会社にしては珍しい。
初めての経験のように思うが。
どちらにしても蟹江が上手く話をつけなければ先へは進めない。
「専務、非常に言いにくいのですが、納品分の商品と納品書の数が合わないのです。」
「重なるものだな、失態と言うのは。倉庫担当は入荷時の確認はどうなっている?! 今頃数字が合わないとはどういうことなのだ? それにその数字は経理へ伝わっているのだろう?」
倉庫の杜撰な管理がここで露見するとは、実に興味深い仕事だよ、加奈子。
君がここにいなくて良かった。
これ以上加奈子に余計な心配をかけさせたくないから。
販促課が落ち着くまで加奈子には実家のお義母さんの手伝いでもさせるか?
結局この日、俺が自宅へ戻って来たのは日付が変わろうかと言う頃だった。
それでも、何とか無事事無きを得たようで安心していた。
蟹江が大型商品を取り扱う部署へ直談判しに行ったのが良かった。
おまけに大型商品向けのシールだから裁断すれば3倍にして使えたのが不幸中の幸いと言うもので、印刷会社も安堵していた様だ。
一番胸を撫で下ろしたのは今回の企画を担当した販促課の連中だろう。