いつかウェディングベル
江崎は重役フロアへと足を運ぶと受付で専務への面会を申し込んでいた。受付担当の秘書は専務専属秘書へと連絡をし面会可能かを尋ねていた。
「どうぞ、専務はお会いになられます。」
「ありがとう」
江崎は専務室の前まで来ると大きく深呼吸をしてドアを叩いた。
「どうぞ」
江崎が一体何用でここまで来たのか興味はあったが、どうせ吉富と加奈子の一件だろうと思うとその興味も薄れてしまう。
ドアを開け部屋へと入って来た江崎の顔を見て、真剣な眼差しにいつもの江崎とは違うと感じると俺はいつまでも加奈子の件を放置は出来ないと感じた。
「急用と秘書から聞いたが何か問題でも起きたのか?」
「はい。吉富さんが私の作業中のパソコンの電源ボタンを押したんです。」
「・・・・それは・・・江崎の業務を妨害したということか?」
吉富らしからぬ幼稚な真似を何故江崎を相手にしているのかと俺は不思議でならなかった。
俺は立ち上がったものの椅子に深く座ると大きく溜息をついてしまった。
「それで吉富との喧嘩の仲裁をして欲しいとでも?」
「そうです。喧嘩はしていませんが吉富さんの問題が解決しないことにはあの部署での仕事はかなり難しくなります。」
多分江崎が言いたいのは俺と吉富と加奈子の関係が職場の雰囲気を悪くし、仕事にまで支障をきたしているという事だ。
だから、俺はいつまでも隠し通せないから公にした方がいいと何度も加奈子に言ったんだ。
だけど、取りあえず企画が終わるまで待って欲しいと言う加奈子の望みを認めたのは俺だ。加奈子ばかりを責められはしない。
「吉富は今はどんな様子だ?」
「多分、専務と田中さんの関係を受け入れられずにも藻掻いている状態ですよ。」
江崎はハッキリと言い難いことを遠慮もせずに俺に面と向かって言えるものだな。ある意味感心してしまう。
しかし、ここで江崎相手に今の発言を認めていいのだろうか?
俺が認めると加奈子との関係を社員に宣言したようなものだ。