いつかウェディングベル

今夜の俺はどっちが誘ったかという事ではなく、会社のあの噂の出どころを問い詰めるつもりでいたはずだ。


なのに、つまらない事で加奈子を怒らせてしまっただろうか?


しかし、台所の後片付けを済ませて寝室へやって来た加奈子はやはり機嫌は悪くないと見た。


加奈子はあんな噂をたてられ立腹しないのだろうか? 自分の夫を小馬鹿にされたのにと思うのだが。


俺は、やはり、自分の人間性を疑われるような噂はやめて欲しいと思っている。




「俺が変態扱いされるのがそんなに嬉しいのかな?」


「まさか! 実はね、今日、会社から帰ってきた時に実家の母から電話があったのよ。」



実家の義母といえば、今はリハビリを頑張っている義父の付き添いをしているはず。


加奈子の笑顔はきっと義父の状態が良くなっているのだろう。



「お義母さんはなんて?」


「今日ねお父さんが初めてベッドから降りて歩いたんだって。」


「それだったら、看護師の介助を受けながら車イスに乗っていただろう?」


「違うのよ。自分一人で動けるようになったのよ。介助なしで。リハビリも順調らしいの!」



加奈子が喜ぶのも無理はない。事故で眠り続けた父親がやっと意識を取り戻したのだから。


俺のたわいもない噂など可愛いものだ。



「お義父さんの病院へお見舞いへ行こう。加奈子の笑顔を見るともっと力が湧いてくるはずだ。」


「一緒に行ってくれるの?」


「当たり前だろ。加奈子にとって大切な親なら俺にも大切な親だよ。」



もう俺たちの関係は知られたのだから遠慮せずに加奈子と一緒に出掛けられる。


明日は朝一でお義父さんの病院へ出掛けることにしよう。もちろん、芳樹も一緒に。
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