いつかウェディングベル
義父が入院する病院へと着くとさっそく病室へと向かった。きっと、今頃は朝のリハビリでも始めているだろうと、そのリハビリの様子を見れるのではないかと楽しみでもあった。
加奈子の話しでは義父はかなり体を自由に動かせるようになり、だいぶん筋肉もついてきて動きもしっかりしてきているとのことだった。
病室へ行くと義父と義母は二人とも病室にいて一緒にお茶を飲んでいた。
とても穏やかな雰囲気の二人を見て羨ましい夫婦像ってこんなものではないだろうかと感じた。
体の不自由な夫を心配する妻とそんな妻を気遣っている夫。まるで理想の夫婦のように思えてしまうほどに絵になる二人のように感じる。
「元気そうで良かったです。安心しましたよ。」
「なんだ、お前はまだくたばっておらんのか?」
「ええ、そう簡単には加奈子は手放しませんから。」
憎まれ口を叩くのは俺達の訪問を喜んでいるから。そんな義父を長いこと放っておいた俺は加奈子の夫として申し訳ない思いでいっぱいだ。
「お父さんも透も、直ぐ顔を合わせるとそんな事ばっかり言うんだから。たまには仲のいい会話ってないの?」
「ん?そんなつもりはないぞ。」
「そうだよ。加奈子、お義父さんは喜んでくれているだけだよ。」
俺と義父は同意見だが、どうも男というものは素直な生き物ではないようだ。
すると、俺の顔をジッと見つめる義父の視線に俺は頬の殴られた痕を見つけられたのだと思い顔を反らせた。
しかし、その時には遅く義父の目にはしっかりその痕が見えていたようだ。
「その年で喧嘩か?」
「え・・と、いえ、.........はい。男の勲章ってヤツです。」
「勲章か。今後もその勲章は見られるのか?」
「いえ、これで見納めです。」
「つまらん」
義父は頬の傷痕を見て詳しい内容を聞こうとしなかった。けれど、「男の勲章」で何となくこの傷痕がなんなのか察して貰えたようだ。