いつかウェディングベル
この後、皆一緒に談話室へ行こうと話が決まり病室を出ることにした。
一人で歩けるようになったものの、疲れさせない様にと義父を車椅子に乗せ談話室へと向かった。
そこでは家族の日頃のなんてことのない話しをして楽しんだ。
義父も義母も滅多に会えない芳樹の日常の生活の話を聞くのが楽しいようだ。娘の加奈子の話も聞きたいだろうと加奈子の話題を振っても義父は良い顔をしなかった。
「加奈子の話はせんでもいい。」
「娘の話を聞きたいでしょう?」
「そんなのただの惚気だろ」
確かに、俺に加奈子の近況説明すれば惚気になってしまうんだろうと感じた。きっと娘をどこの誰とも知らぬ男に横取りされたのだから、そんな気持ちになるのも当然なのだろう。
俺も娘を持てば義父の気持ちが分かるようになるんだろう。
「そろそろ部屋へ戻りましょうか? お父さんは疲れていない?」
「大丈夫だ。それより、お前こそ、たまには家でのんびりすればいいのに。もう、俺は自分のことは自分でできるんだ。わざわざここまで来なくてもいいぞ。」
「そんなわけにはいきませんよ。それに、今は仕事を辞めることが出来たからせめてお父さんの世話くらいさせて下さいな。」
「・・・・・ったく、暇人だな、お前も。他にすることはないのか?」
「暇なんですよ、私は。」
義父と義母の会話を聞いていると本当にこの二人は想いあっている夫婦なんだろうと思った。良い年の取り方をしているんだろうなと俺は羨ましかった。
こんな夫婦に俺と加奈子もなれるだろうかと、いや、俺達もなれるのだと信じている。
「加奈子、お義父さんは元気過ぎて俺達が邪魔なんだよ。帰ろうか?」
「そんなことないわよ。喜んでいるんだから。」
「いいや、もうお前たちは帰れ。どうせ今日も仕事を休んできたんだろう? 」
「でも、」
加奈子は父親が心配なだけで父親の元気な顔を見ればそれだけで安心するのだ。
だけど、きっとそんな娘に負担をかけたくないのだろう。
「加奈子、お義父さんを疲れさせるのも良くないよ。また、来ればいい。」
加奈子を納得させると俺たちは病室を出て行った。