いつかウェディングベル

「まだ剥れているのか?」


「だって、もう少し居てやりたかったから。」


「長居すると疲れさせるだけだよ。長居するより数多く病院へ通った方がいい。」



加奈子もそれは分かっているようだが、病院までの道のりを考えると仕事をしている加奈子が簡単に来れる距離ではない。


だから、長く居たいのだと分かっている。



「なあ、お義父さんの症状はどうだろう?もし、リハビリに専念できるようになったら転院したらどうだろう?」


「病院を近くへ変えるってことなのね?」


「そうすれば、お義母さんの手伝いも出来るし、お義父さんの見舞いも頻繁に行ける。時にはお義母さんと交代で加奈子が世話することも可能になるよ。」



加奈子もそれだと嬉しいようで少し考え込んだ。


しかし、転院するとなると義母が自宅からの距離が遠くなり付き添いに行くことが難しくなる。


義父にとっては愛娘より妻の姿を見れなくなるのが辛いのではないかと思った。


俺だってそうだ。もし、俺が同じ目に遭ったら芳樹には当然会いたいが、加奈子と会えなくなると思うだけで心は苦しくて辛い毎日になるだろう。


毎日加奈子とは会いたいし会えなくなるなら発狂してしまいそうだ。


なんてことは、絶対に加奈子には教えないけど。




「透の気持ちは嬉しいけど、でも、それだとお母さんが病院へ行く足を持たないから大変になるわ。それに、生活だって・・・」



「こっちの病院にいる間、俺のマンションに住んでもらうのはどうだろう?もし、お母さんが気兼ねするようなら加奈子が一緒に泊まってもいい。なんなら、その間、俺も芳樹も一緒にマンションへ戻ってもいい。」



今度は加奈子の義母としばらく暮らしても良い。それだと、義母の生活の心配をする必要はなくなる。


それに、これなら親孝行の真似事くらいにはなるだろう。


多少の孝行をするのは俺達には当たり前のことだ。


これくらいのことでは、これまでしてきた親不孝などチャラには出来ないがしないよりはマシだと思う。

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