いつかウェディングベル

「透の気持ちは嬉しいわ。でも、そこまでは甘えられないし・・・」



加奈子は俺の意見にかなり興味を持っているようだが、多分、嫁ぎ先に迷惑をかけるのを躊躇してるのだろう。


俺の親の目を気にしているのだろう。


しかし、加奈子の義父の事故の原因を作ったのは俺であり、そんな俺にしたのは親父でもある。


だから、俺達親子が加奈子の両親へ償いをするのは当然だ。だけど、償いという気持ちより家族だからと言う想いの方が強い。



「加奈子の親は俺の親でもあるだろう? 加奈子の家族なら俺にとっても家族だよ。親父もお袋もそう思っている。」



「でも、」



「俺にも少しは親孝行させてくれよ。加奈子だけの親じゃないんだよ。それに、芳樹だってたまには一緒にいたいだろう?」



加奈子はよほど嬉しかったのか目にいっぱい涙を溜めていた。


顔を両手で覆うとすっかり目からは大粒の涙が流れていた。



きっとこれまで何年も親不孝をしてきたと苦しい思いだったんだろう。その上、あんな姿にした父の面倒を見れず母の手伝いも出来ず心苦しかったのだろう。


俺は涙の止まらない加奈子を抱きしめていた。


今、俺にできることはこれくらいしかない。



「加奈子、夜にお義母さんへ電話するといい。話をしてごらん。それに、お義父さんへは俺からも話をするよ。」



「本当にいいの?」



「いいよ。加奈子がお義母さんに話をしている間に俺も親父たちに話しておくよ。」



親父もお袋もきっと寂しがるだろう。芳樹がいなくなると。


いずれ別居を考えていたが本当に別居することが俺達の幸せなのだろうか?


それに、加奈子の両親も嫁いだ先の娘の世話になりたがるものだろうか?


例え俺のマンションとは言え、そんなところに来たいものだろうか?


俺達が自宅へ戻るなりお袋に相談しようと思ったが、加奈子の目があるため俺一人仕事に戻ると言って会社へと出かけた。

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