いつかウェディングベル
「今回のことは私にも責任はある。私から加奈子さんのお父さんに話をしておこう。」
「だけど、そこまで親父にさせるわけには。」
「父親同士弾む話もあるんだ。俺に任せておけ。」
親同士の話し合いならば俺が口を挟むのは止めておこう。きっと、親父には親父の思惑があるのだろう。
そう思って俺は後のことを親父に任せることに決めた。そして、社長室から出ていこうとすると親父が俺を引き留めた。
「その代り、一つ俺に任せて欲しいことがあるんだが。」
まるで交換条件のような言い方をされると俺の神経は穏やかではなくなる。
父親が息子の嫁の心配をして気を遣ってくれているのだと思っていたが、どうやらそれだけではなさそうだ。
親父の思惑とはこの交換条件にあるのだろう。
「なんなのです?」
「今回、ウェディング部門を設立する予定だ。」
ウェディング部門とは加奈子が考えていた企画書のことだ。
だけど、あれは加奈子が独自に考えたもので本気で会社へ提出する為に考えられたものではない。
それを交換条件に出すとはどういうつもりだ?
「会社の解体と再編成を考えているが、勿論、社内全体をどうこうするつもりはない。これまで通り利益を上げている部署と努力次第で伸びそうな部署は残す。しかし、加奈子さんの部署は利益は上げているようだが平行線のままで今後を見込むより新規事業を試みたいと思っていてね。」
会社のどの部署も売り上げは好調で利益も予想を上回るものを上げている。
加奈子の部署もそれほど悪くは感じないが、きっと、親父は加奈子の企画書を見てその事業を面白く感じたのだろう。
少子化で子供にお金をかける親は多くなったが、近年では結婚式を質素にしたり式自体をしない新婚夫婦も多い世の中、何故こんな危ない事業を始めたがるのか俺には理解できない。
なのに、何故、そんな部署の設立を交換条件にするのか俺にはますます理解不可能だ。
「まさか?」
「そう、その、まさかだ。この事業の責任者に加奈子さんを選ぼうと思っている。」
親父はこれまで事業に於いては無謀なことはしてこなかった。なのに、何故、こんな危険な事業に取り組もうと言うのか俺には納得出来なかった。