いつかウェディングベル
翌朝、俺は加奈子から話を聞き出すことに失敗し落ち込み加減で会社へと向かった。
加奈子のいつもと変わらぬ様子に俺は余計に気が苛立ち少し怒りっぽい一日になっていた。
秘書に連絡し親父の今日の予定を聞けば一日中外出していて連絡が取れないと言う。親父にそんな商談があったかと思い返してみても重要なものがあるかどうか思い当たるものはない。
最近は抱えている問題もないはずで会社に戻ることのない親父を疑わしくも感じる。
親父から聞かされていた販促課の状況をもう少し知りたくて商品管理部門へと足を運んだ。他の部署は通常通りの忙しい仕事場となっていたが、加奈子の部署の販促課ではのんびりとした雰囲気で人員もまばらだ。
社に残っていたのは蟹江と岩下だけで課長も吉富ら数人の社員の姿もなかった。
「蟹江、今日は二人だけか? 他の連中はどうした?」
「私達でレビューや在庫の確認しています。それに、クレーム処理も今の所は二人で十分で大した内容のものはないです。コールセンターからも特に何も連絡はなかったです。」
「なのに、他の連中は?」
吉富はもともと顔を会わせたいとも思わないから丁度良かったと思うが。
この際、どこかへ飛ばすか? 今度、加奈子に言い寄った時は即時に外国行きだ。
「それが、吉富さんと江崎さんは倉庫の方ですが、課長と坂田さんはその・・・」
「倉庫じゃないのか?それに、加奈子はどうした?姿が見えないが。」
「それが・・・」
蟹江が困った表情をすると岩下が直ぐに蟹江を庇う様に話しはじめた。
「田中さんの指示で課長と坂田さんは市場調査へと出ましたよ。」
「市場調査? なんのだ?」
「さあ、詳しくは知りません。我々は通常業務ですが課長と坂田さんは田中さんとチームを組んで何かやっていますよ。専務はご存じないのですか?」
「いや、そうか。ならいい。仕事中に悪かったな、作業の手を止めてしまって。」
蟹江の胸を撫で下ろしていた様子を見てこれは俺に秘密で何か起きているのだと感じた。