いつかウェディングベル
親父が交換条件を出した所を考えると、俺には内緒で加奈子を動かしながら何かを企んでいる。
そして、それはこの販促課の加奈子らの部署の連中も詳細を知っているようだ。
知らないのは俺一人のようでますます苛つきは膨らむばかりだ。
考えられるのはウェディング部門についてだ。
あれ以外に考えられるものは何もないが、それにしても、一体何を考えているのだろうか?
新規事業を設立するのは悪い話ではない。会社全体が新しい事業に活気づくし社員の士気が高まれば事業にはプラスになる。
しかし、こんな風に秘密裏に進められると良からぬことを考えてしまう。
息子であり専務の俺を差し置いて加奈子だけなら兎も角も社員まで巻き込んでやることはないだろうに。
暫く様子を見ようかと思ったが、これは急いで真相を調べた方が良さそうだ。
今、外出中の親父だ。
鬼の居ぬ間にじゃないがここで社長室に何か隠していないか調べてみるか?
俺は、急いで社長室のあるフロアへと急いだ。
エレベーターを降りて社長室へと行こうとすると、いきなり秘書にその足を止められてしまった。
「専務とは言えお通しすることは出来ません。社長よりどなたも通さないようにと申し付かっております。」
「私は問題ない。他の者を通さなければそれでいい。」
「いいえ、今は困ります! 社長との面会でしたら少々お待ちください。社長に連絡を致しますので。」
「社長に用があるわけではない。私が責任を取る。君らは自分の仕事に戻りなさい。」
鬱陶しい秘書の阻止をなんとか振り切りながら俺は誰もいないはずの社長室へと向かいドアを開けた。
するとそこには主のいない空の部屋のはずなのに親父は勿論のこと加奈子もいれば坂田もいる。そして、課長もそこに居た。
「どういうことですか?」
「申し訳ありません、お止めしたのですが。」
秘書は必死になって親父に謝っていたが俺が強行突破をしたのであって秘書は関係ない。
勿論、それは親父も重々承知している。
「分かった、君は下がりなさい。専務はこちらへ。」
社長としての顔でそう言われれば俺も息子ではなく専務として発言することにしょう。