いつかウェディングベル

「加奈子はどこへ行った?」


「田中なら坂田と出掛けていますよ。」


「そうか、戻ってきたら俺のところへ来るように伝えてくれ。」



俺はまだ吉富を完全に信用できずに、販促課へ足を運んでは加奈子の所在を確認するし販促課の様子もうかがう。


加奈子はウェディング会社設立の為にも今回の仕事には力が入るだろう。



「完全に自分の女って顔されては俺も諦めるしかないけど納得できないんですがね。」


「お前の許可など要らんだろう。加奈子はもともと俺の女だ。」


「もともとね・・・、その彼女を一度は捨てたくせに?」



一番言われたくないことを、人がそのことで苦しんでいると言うのに、そんなことを平気な顔をして言われるのには我慢がならない。


それを言う相手が吉富だと特にそうだ。



「なあ、吉富君。君さあ、北国へ行く気はないかい?景色は素晴らしいし空気もキレイで良いところだよ?」


「遠慮します。それに、人事を女絡みで決めて良いんですか?」


「加奈子は特別だ。」


「やってられないな。俺、倉庫に行ってきます。」



吉富とはあれ以来何もない。こんな風に嫌みなことを言うが、吉富も諦めがついたようだ。


加奈子に手を出そうとしたり言い寄ったりと、そんな素振りは見せなくなった。


しかし、長年の思いをこの数日で忘れられるはずはない。


用心に越したことはないと俺は何時も目を光らせている。



こんなに俺は加奈子を気にしているのに、肝心の加奈子は俺に言わせれば冷たい女だ。


あんなに結婚前は情熱的に俺を拒んでは罵ったくせに、ベッドではかなり積極的に燃え上がっては俺を求めたのに。結婚したとたん加奈子を抱くのに俺は苦労している。


社長室でついやってしまったら、加奈子を怒らせてしまってその日の夜はふて寝して相手してくれなかった。


俺は加奈子に振り回されてばかりだ。


一度くらい加奈子を振り回して俺のためにどぎまぎさせたいし、悩ましい顔をして欲しい。


そしたら、俺が遠慮なく加奈子を優しくこの腕の中で甘やかして、甘やかして・・・・




仕事でもするか・・・
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