いつかウェディングベル
その日の夜も、加奈子は帰宅後に食事を済ませると書斎へ籠り仕事をしていた。
そんな加奈子の体調も心配だがストレスが溜まらないだろうかと気になってしまう。
だから、珍しくコーヒーを淹れて加奈子へ差し入れをしようと思った。
キッチンへ行くとそこにはまだ増田が片づけをしていた。そこで俺がコーヒーを淹れようものならどんな厭味が飛んでくるかと思ったが、俺は加奈子の為にコーヒーを淹れたいのだから堂々とキッチンへ入りカップを取り出しコーヒーを淹れる準備をした。
俺を横目で見ていた増田は特に何も言わなかったが、片づけをしていた手を止めて俺のすることを眺めていた。
「何か?」
「いいえ。若奥様のコーヒーですか?」
「まあ、そんなものだ。」
俺がコーヒーを淹れるのがそんなに珍しいのか?と文句の一つ言いたくなったが、増田は戸棚から小箱を取り出すとお菓子を少しお皿にのせてくれた。
「お仕事で疲れたときは甘いものが必要なんですよ。」
どう見てもこれは芳樹のおやつのようにしか見えない。しかし、仕事で疲れている時はこんな低カロリーの甘いお菓子も気分転換にはいいのかもしれない。
そう思った俺はコーヒーと一緒にそのお菓子も運ぶことにした。
「増田、ありがとう。」
「透さん、あんなに素敵な奥様はいらっしゃいませんよ。大事になさって下さいね。」
「十分承知しているよ。俺には勿体ないほどの奥さんだよ。」
加奈子は俺には出来過ぎた嫁だと思う。加奈子にあんな酷い仕打ちをしたのに許してくれたんだ。
そんな加奈子を大事にしなかったらきっと俺には天罰が下るだろう。