いつかウェディングベル
「仕事は捗っているかい? 俺に何か出来ることがあったら遠慮なく言って欲しいんだ。」
「ありがとう。でも、今は販促課の皆が手伝ってくれるし情報提供もしてくれるのよ。とても助かっているの。」
それは、また、吉富を頼っているという事なのだろうか? 俺はそれが苦痛で堪らないのに加奈子にはそれが理解できないのだろうか?
「透、私ね長年想い描いていた結婚式があるの。」
「うん、知ってるよ。あの企画書だろう?」
「そうなんだけど。でも、そこには書いていない本当の想いがあるの。それは当日に透に見て欲しいの。」
ということは、今の段階では俺には知られたくない何かがあるのだろうか?
結婚式当日に俺に見せたいものならば、きっと、悪いものではないはずだ。結婚する相手の気分を害するようなことを普通はしようとは思わない。
「だから、ごめんね、それまでもう少し透には我慢して欲しいのよ。きっと、素敵な結婚式にするわ。」
「その後の会社の運命がかかっているからな。」
「そうよ、私達の結婚式は会社の運命も背負っているのよ。だから、私に力を分けて。透の逞しくて素敵な愛の力が欲しいわ。」
本当に加奈子は誘惑の上手な妻だよ。そんなことを言われては俺は加奈子に愛の力を与えたくなるだろう。
俺と加奈子が想いあっているこの気持ちさえあれば、きっと加奈子の夢は叶うだろう。
加奈子の夢は俺の夢でもある。俺は加奈子の為ならなんでもする。
「もう誰もいないようだ。」
「そうね。この後仕事があるけど30分くらいなら透と一緒にいてもいいわ。」
「それはキスして欲しいってこと?」
加奈子はテーブルに腰かけると俺に抱きついてきた。そして、耳元に唇を当てられると加奈子の息が吹きかかる。
俺は体がゾクゾクすると加奈子の瞳は悪戯っ子のように生き生きとしている。そんな瞳は次の瞬間俺の視界からは消えてなくなった。
俺と加奈子の甘い時間の始まりだ。