いつかウェディングベル
翌日、久しぶりにのんびりと過ごしたい俺達は芳樹を連れて加奈子が検討しているマンションへと出かけて行った。
駅に近くセキュリティもしっかりしていて申し分のなさそうなマンションだ。
「管理人も常時在中しているし、設備もよさそうだし、ここならお義父さんは快適なんじゃないかな?」
「1階には住人専用のサウナや温泉、小さいけどプールまであるのよ。」
「俺が住みたい気分になるよ。ここって分譲マンションなのか?それにしてはかなり高級だしなんか違うよな?」
「実はね、ちょっと違うのよ。」
加奈子の説明によると、分譲マンションを購入しようと考えていたらしいが少し事情が変わったらしい。
義父に事故の後遺症が少し残っているらしく、日常生活は問題無いものの歩行に少しだけ足を引きずるような動作をするらしい。
見た目それ程違和感のない歩き方が出来るそうだが、義父の将来を考え病院経営の施設型マンションの購入が望ましいと加奈子は考えた様だ。
施設型とは言っても殆ど普通のマンションと同じで特に変わったところなどは見当たらない。
けれど、個人の住居スペースに入ると体に負担にならない工夫があちこちにされておりナースコールの釦まで用意されていた。
加奈子の両親はまだ若くて介護など先の話だが、体に少し障害が残るのなら早めにこのような住居に入居し将来に備えるのも良いものだと思えた。
だけど、こんな住居を勧めなければならない体にしてしまったと考えると俺は胸が締め付けられる思いがした。
「素晴らしい眺めよ。素敵だわ。庭は広いし散歩するのに良さそうな遊歩道があるわ。」
「本当にそうだな。お義父さんが気に入ってくれるといいな。」
「きっと気に入るわ。それにね、ここだと家から近いから私も顔を出しやすいしお母さんの手伝いができると思うのよ。」
「ここなら大丈夫だよ。きっと芳樹らが大きくなれば一人で遊びにも来るだろうね。」
加奈子の両親に喜んでもらえると嬉しいと思いながらも俺は複雑な思いで庭を眺めていた。