いつかウェディングベル
それからの日々はあっという間に過ぎて行った。
加奈子ら課長と坂田の三人は、会場となる場所が決まったことで会場づくりや当日の演出についての話し合いや業者選びなどに時間が掛かるようになった。
会場を決めたという話は俺の耳に入って来たが、いつ、どこで行われるのか、そんな情報は入ってこなかった。
「うーん・・・・・今日も加奈子はいないのか。」
俺は会議室で販促課の連中と顔を合わせているところだが、目の前に吉富がいるかと思うとどうも会議に身が入らない。
「こちらの販売は終了しましたが、問題点がいくつか残りました。それについて今後の企画に・・・・・」
「蟹江、専務は完全に上の空だ。今日の会議は中止にしろ。」
「だけど、これで私達の仕事は最後なのよ。最後くらい決めたいじゃない?」
「頭の中は嫁でいっぱいなんだろう?俺達の話など聞いちゃいない。」
吉富が怒るのも無理はなかった。
販促課最後の企画はこの会議をもって終了、という日なのだから。
予定していた在庫が無くなり次第販売終了となる今回の企画だが、割と早い段階で在庫はなくなり処分価格でキャンペーンを行わずに済んだと胸を撫で下ろしていた。
「蟹江、最後に分かりやすい資料をありがとう。」
「いいえ、吉富さんと一緒に仕事が出来て楽しかったわ。こちらこそありがとう。」
「俺も吉富さんと仕事できて非常に楽しかったよ。」
蟹江の素直な挨拶とは違い皮肉たっぷりな江崎の挨拶に吉富は顔を歪めていた。
しかし、吉富は自分は大人だからと江崎に握手を求めた。
江崎は最後だからと握手に応じ吉富の手を握ると、吉富に実に力のこもった握手をされていた。
握手を終えると江崎はかなり手が痛かった様でしばらく蹲っていた。
「吉富さん、あんたが振られるのも納得だよ。」
江崎のセリフはもっともだと思って聞いていた。
が、どちらにしても吉富も江崎も加奈子に振られた男だ。哀れな奴らだと俺は高みの見物をしていた。