いつかウェディングベル
最後の会議を早々に終えると俺達は一度販促課へと戻って行った。
今日は、加奈子らも合流し最後の顔合わせをすることにしている。
業務終了後は販促課のお別れ会を会社近くの居酒屋で行うことにしていた。
そのお別れ会で俺達の仲を引き裂こうと未だに吉富は加奈子を狙っている。
まるでスッポンのような吉富に江崎は呆れ果てていた。
「遅いですね、加奈子さんたち。」
「江崎、お前、さっき加奈子からの電話を受けたんだろう?」
「ええ、偶然専務より先に受話器を取ったもので。ですが、直ぐに戻ると話してましたよ。」
夕方に販促課へ電話がかかった時、加奈子からの電話だと予感した俺が受話器を取ろうとした。
ところが、俺の動作をみていたのか江崎が俺より素早く受話器を取ってしまった。
あれを偶然と言うのか? 絶対に狙ってやったものだ。
俺には加奈子は諦めたと言いつつも、態度は吉富と同じく俺に敵対心剥きだしじゃないのか?と思える時がある。
今の電話にしてもそうだ。
専務の俺が取ろうとしている受話器を平社員の江崎が横取りするか?!
絶対に、江崎も吉富も遠くへ飛ばしてやる。
明日の人事を楽しみにしていろよ。
俺と江崎、吉富の静かな時間が周囲には異様な空間に見えたのだろう。
しかし、この場には他にも蟹江や岩下も一緒にいるのだ。
加奈子絡みの人間だけがいるのではない。
なのに、何故か、販促課の俺達に見物人が現れる。
そして、また、社内では加奈子を巡り修羅場が発生したとの噂が流れてしまう。
結局その日は加奈子の方の仕事が遅れ、皆の最後の挨拶はお別れ会をする居酒屋で行うことになった。