いつかウェディングベル

俺は株主なのだからと新会社の様子を見に来たのだが、明らかに新会社のメンバーである元販促課の連中に煙たい扱いを受けている。


新会社なのに殆ど見慣れた光景の事務所で、デスクの配置や花瓶などの飾り物の位置や物まで販促課を思わせるものが多い。


受付だけは白で統一され、まさしくウェディングを連想させる清楚な出来栄えだが、一歩事務所へ入るとそこは販促課そのものだ。



「見かけたことのあるデスクだな」


「ああ、これですか? 販促課で私がこれまで使っていたデスクです。」



吉富は厭味ったらしく説明を始めた。


加奈子らが使用していた事務用デスクを処分するならばと、社長がお祝い代わりにと加奈子の会社へ譲ったそうだ。


男性社員ら全員でこれらの備品を全て運び込み事務所を作り上げたそうだ。



「だから午前中は大変だったんですよ。ここへ運び込むのに皆で助け合ってやりましたからね。」


「本当に、吉富さんが居てくれて助かったわ。」


「俺に出来ることは何でも言ってくれよ。しっかり手伝うからね。」



加奈子を諦めた男のセリフとは思えない食えないヤツだ。


それに、何故か吉富と江崎が協力している様に見えるのは俺のきのせいだろうか?


どう見ても犬猿の仲だったはずだが、どうやら本当の敵は俺だと分かれば江崎と吉富が手を組んだと考えてもよさそうだ。



「自分のものだと見せつけたいだろうけどここは職場ですからね、我が社の代表には絶対に近づかないで下さいよ。」


江崎にも念を押されてしまった。


どうやら俺が、昨夜居酒屋から出て来た加奈子を抱きしめキスをしたのがこの二人は気に入らなかったようだ。

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