いつかウェディングベル

完全に部外者扱いされてしまった俺は加奈子の事務所へ足を運びたくても運べる雰囲気ではなかった。


俺が事務所へと行くと、最近では蟹江や坂田に追い払われてしまう。


事務所の奥にあるもう一つの部屋は作業場なのか、江崎と岩下がそこで何やらパソコンを使った作業をしているようだ。


坂田が俺を追い払うのに何時までも時間をかけていると江崎らに呼ばれ仕事へと戻って行く。


どうやら、江崎と岩下・坂田の三人で何かを制作中のようだ。


課長と吉富は会場の最終確認や業者との打ち合わせで出かけている。


そして、事務所入り口に儲けられているドレスの展示スペースに飾るウェディングドレスの手配を加奈子と蟹江でやっていた。


俺達の結婚式だけでなく今後の仕事の為の準備も兼ねて毎日忙しそうにしている加奈子を俺は見守るしか出来ないと分かった。


吉富や江崎への嫉妬など馬鹿げたことだと感じると俺は加奈子の事務所を訪れるのを止めようと思った。






「透、少し時間良いかしら?」



珍しく勤務中に俺の部屋を訪れた加奈子は以前よりイキイキしている様に見えた。


毎日家でも顔を合わせるのに会社で見る加奈子の表情は一段と輝いて美しい。


そんな加奈子を見ると俺はとても嬉しくもあり寂しくもある。


俺のいない所でそんなに輝いていて欲しくない。



「加奈子」


俺は急に悲しくなり加奈子を抱きしめてしまった。



「どうしたの?」


「加奈子がどこか遠くへ行きそうで俺は怖いんだ。」


「私は透のそばに居るから生きていけるのよ。透のいない所では私は生きてはいけないわ。」



加奈子の言葉が嬉しくて堪らないのに俺はまだ心配で心が押しつぶされそうだった。


きっと、仕事が忙しくて加奈子に触れる時間が無くなっているからだろう。


もっと加奈子に触れていればこんな不安もなくなるのだろう。

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