いつかウェディングベル
「ただいま、加奈子。」
「おかえりなさい、透。」
珍しく加奈子が俺に抱きついてきた。芳樹や奈美と一緒に抱きしめる加奈子もいいが、たまには二人っきりで抱き合いたいと思っていたら加奈子が俺の頬にお帰りのキスをしてくれた。
久しぶりにキスされたようで俺は自分の顔が赤くなっているのが分かる。
たかだか妻からのキスではないかと思いながらも俺は興奮してしまった。
「加奈子、ただいま」
子ども達を抱きしめながら俺は加奈子の唇にキスをした。軽く触れるだけのキスのつもりだったのに、加奈子は俺の首に抱き着いてきて甘ったるいキスを返してくれた。
いきなりのキスに驚いたが嬉しくなって加奈子の唇を貪るように何度もキスをした。
「加奈子、もっとキスして」
抱きかかえる子ども達の頭をしっかり押さえながら俺達のキスを見られない様にするのはちょっとスリルがあって楽しかった。
加奈子とのキスがこんなにも俺の心を弾ませてくれるなんて結婚初夜以来じゃないかって思える程に嬉しかった。
「さあ、パパの顔を見たからもう寝るわよ。芳樹、奈美、お布団へ入りましょうね。」
「パパも一緒に寝ようよ!」
「今夜はねパパはママとお話があるのよ。だから、奈美と一緒に寝てくれるわね?お兄ちゃんだから芳樹はもう大丈夫よね?」
「うん、いいよ。僕、お兄ちゃんだから奈美と一緒に寝る。」
「お利口さんね。さあ、お布団まではママもパパも一緒に行くわね。」
加奈子が子ども達に説明していた「話し」とは何だろうと俺は少しその言葉が引っかかってしまった。
会社で何かあったのか、それとも、俺は何か不味いことでもしたのだろうか?
或いは加奈子の両親に何かあったのか?
俺は加奈子の口からその「話し」を聞くまでは心中穏やかではなかった。