いつかウェディングベル
「まって、透」
「待たない。これまでずっと加奈子に触れられなかったんだ。俺、もうそんな生活は嫌だ。もっと加奈子にキスしたいし抱きたい!」
加奈子が俺の子どもを欲しがっているのだから構うものか。
これからは毎晩加奈子を抱くんだ。
「透! 最後まで話を聞いて! 大事なことなの!」
必死になる加奈子の顔を見てそれ以上先へは進めなかった。
結局は今夜もお預けなのかとかなり落ち込みそうになった。
俺は加奈子に背を向け寝転んだ。いい年した大人の男がと呆れるだろうが、それでも俺は加奈子との甘い時間を期待しただけに裏切られた気分に相当凹んだ。
まるで駄々っ子と同じでふて寝する俺の頭を撫でる加奈子の手は温かく優しい。
「私ね今の仕事はとても好きなの。透と念願の結婚式を挙げてあんなに幸せなことはなかったわ。周りに祝福されて愛する人と結婚式を挙げれるのは女なら誰もが夢見るものよ。」
加奈子は俺の体ごと仰向けにすると額を撫でて前髪をかきあげた。
「これまで生きてきたなかで最高に幸せな瞬間をこれから結婚する人達にも味わって欲しいの。私の幸せをお裾分けしたいって思うの。私は世界で一番幸せな女だと思っているわ。」
加奈子の唇が額に触れると頭が痺れそうだ。
頬に触れる柔らかい指が俺の体をゾクゾクさせる。
「でもね、私達夫婦が何時までも幸せで愛し合っていなければ他の人たちに幸せなんて与えることなんて出来ないわ。」
「これから結婚しようとする者達の為に愛しあうのか?」
「ううん。透とこれ以上離れていたくないの。透とはいつも一緒にいたいの。朝、目を覚ましたとき透の腕の中で目覚めたい。眠るときは透の胸で眠りたい。一緒にご飯を食べて、もっとたくさん話もしたいし、キスだってしたいの!」
加奈子も俺と同じことを考えていたと思うと嬉しくなった。
俺達はやっぱり夫婦なんだなって思えた。