いつかウェディングベル

保育施設移転計画も順調に進むと加奈子のウェディング部門の業績もうなぎ上りでJQ(株)に取り入れた親父はかなりご満悦の様子だ。


そして、加奈子がアドバイザーとして業務に関わるものの元販促課課長をお客様室長に迎え、吉富と蟹江にウェディングプランニング部部長とウェディングドレス制作部部長を任せることでさらなる業績アップを図った。


保育施設の建設が完了しいよいよ施設移転となった頃、加奈子は三人目の子どもを妊娠していた。


まだお腹が目立たないことを良い事に、最近では家政婦の増田に特訓を受けると言ってケーキ作りに一生懸命になっている。


毎日、仕事から帰ると玄関へ入るなりいきなり甘ったるいケーキの匂いが充満し俺は玄関ドアを開けるのが怖くなる。


食事も美味しいし加奈子が焼いたケーキも美味しい。


しかし、こうも毎日帰宅する度に玄関がケーキ屋のような匂いがしては俺は絶えられない。



「今日は、アップルパイか? 酸味のある甘酸っぱい匂いだな・・・・」



最近ではどんなケーキか匂いでかぎ分けられる程の技術まで身に着きかけている。


会社へ行っても俺のスーツからケーキの匂いがすると秘書らに笑われる始末だ。




「なんだ? 今夜はまさかケーキが主食とは言わないよな?」



帰宅した俺を待っていたのは、特大のイチゴの生クリームケーキとアップルパイだ。


それも、何故かリビングのテーブルに飾られている。


そのケーキの周りには子ども達が今にも食べたそうな顔をして待っていた。



「先に芳樹と奈美に食べさせてやれば良かったのに。」


「ダメだよ! パパ、僕達も手伝ったんだからね!」


「だからね!」


「へえ、芳樹と奈美もこれを作ったんだ。そりゃあ美味しいだろうな。」



すると、加奈子が部屋の電気を消して真っ暗にしてしまった。


一体何が始まるのか?と思っていたら、ケーキのロウソクに炎が灯った。

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